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アメリカの幼児教育事情

アメリカでは仕事で活躍している女性が多い。きっと保育園や幼稚園も充実しているに違いない。・・と思っていました。実際には、働く女性達は、お金持ちでない限り、子供をどこで誰に預けるのか綱渡りのような生活を余儀なくされています。そして迎えたパンデミックで相当数が離職しました。
子育てに差し迫った関心がない男性の主導で、即時的な結果や費用対効果が重要視される社会システムの中で、幼児教育の重要性をエビデンスを持って説得することは難しいことです。アメリカで女性議員が増えるにつれ、幼児教育の重要性が少しずつ浸透してきましたが、幼児教育に関する政策案を「フェミニズム、ガーリッシュ」と一蹴される事も多々あったようです。種々の研究で、幼児教育を受けた子と受けなかった子を比較したときに幼児教育が直接的なテストの点数の向上につながらなかったというデータが得られネガティブに捉えられたという経緯もあります。しかし、多くの研究で幼児教育を受けた子達の方が社会性が身についていたという効果はあったのです。それでも数値として表しにくい事をエビデンスとして認め政策資金を確保する事は難しい。そんな流れの中、アメリカの幼児教育には政府が積極的に関与せず、高額な私立運営の施設やベビーシッターが基本となり、当然ながら大きな「格差」が生まれました。多くの子育て世代は子供達が5歳になって小学校に入学できるまでは個々の涙ぐましい努力の中で共働きをしています。(小学校入学後の学童保育問題も深刻です)
特にパンデミック下ではリモートワークに切り替えできる人は子供と一緒に家で過ごし、家で仕事ができない人で高額保育料が払えない人は職場に子供を連れて行くか家族や友人に頼むかベビーシッターを雇うか、離職かの選択が迫られました。英語が話せない有色人種の女性が白人の子をベビーカーで連れている様子はよく見る光景でしたが、パンデミックになりさらによく見かけるようになりました。いずれにしても、子供を中心に据えて子供の好奇心を刺激する情操的教育を日常に取り込む事は親が意識しない限り困難です。
私達家族が日本にいた時は、好みの幼稚園に子供を預け、午前9時から3時まで週5日間預かってもらっていました。今は無償のところも多いと思いますが、手出しがあっても1人月に3万円程度という感じだったかと思います。アメリカで同じ質と時間の幼児教育を受けさせるとなると、一人当たり月に20万円ほどかかります。ですから、今度3歳になる末っ子には週に3回午前保育だけ受けさせる予定です。それでも日本で出費していた保育料より高額です。
幼児教育が人材育成のための基本的なインフラであり長期的な費用対効果があること、そして家族が共働きするためには不可欠な要素である事が、パンデミックで多くの人が子供を理由に離職した痛手と政権交代によりアメリカでもようやく注目されるようになりました。バイデン政権はUniversal Pre-K(4歳からの幼児教育無償化)に意欲的です。是非とも実現してほしい。できれば我が末っ子が恩恵を受けられるうちに。
画像:NYtimes