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ジョン万次郎に学ぶ

娘がよく「おすすめの本ない?次何読めばいいと思う?」と聞いてくるので、出し尽くした感がある私は、比較的新しい児童文学を有名どころから当たってみたら無難かと思い、適当に12 years old, Newbery honorと検索してヒットした本をランダムに取り寄せて、無責任にどっさりと娘に渡しました。その中に、Margi PreusのHeart of a Samuraiという本がありました。へぇ、何でサムライ?と思い本の袖の粗筋を読むと、どうやらジョン万次郎の漂流記のようでした。ジョン万次郎がMassachusettsに住んでいた時期があるということだけは知っていたものの、詳しいことは何も知らなかった上に、ジョン万次郎の生き様をアメリカ人がどのように描いているのだろうと気になり、娘から取り上げるように私が夢中になって読みました。
時代は約200年前、日本は鎖国体制中。万次郎は田舎の貧しい漁師の子として生まれた14歳の好奇心あふれる少年。最年少で乗り込んでいた漁船が難破して無人島に漂着し、アメリカの捕鯨船に拾われてアメリカに上陸するまでに抱く万次郎の絶望と不安と好奇心。アメリカで船長家族の養子として迎えられ一人前の教育を受けさせてもらう中で数々の偏見と差別に遭うものの、もともと下等な身分に生まれ自尊心が低かったためにあまり気にせず、周りがhappyならそれで良いという万次郎。それに対して「are you going to get up and help the world change?」と養母から叱咤され、世界に自分が関わるなんて考えた事もなかったとショックを受けるシーン。そして誰にでも挑戦する権利があるという風土に徐々に愛着を持ち始める思春期の万次郎。粗くダイナミックなアメリカの生活の中で日本人の礼儀正しく始末が良い生活様式を懐かしく思うシーン。どんな危険を冒してでも帰国したいと思う気持ちと同時に沸き起こる、祖国に受け入れられないのではないかという不安。そして日本に帰還した後、「Wasn’t it funny that his countrymen, who so admire the fleeting beauty of cherry blossoms and the maple’s momentary burst of fall color, clung so fervently to the past?」と旧態然とした封建的な日本を憂う万次郎。
児童文学とはいえ、列挙するにキリがないほど共感する点が沢山あり興味深い本でした。アメリカ人の書いた作品ながら、実際の資料や注釈も沢山盛り込まれ日本人の私が読んでも面白い作品でした。そして、日本は基本的にあまり変わってないのでは・・と思える事もたくさん。江戸時代自体が200年以上続いていることを考えると、今から200年前とはさほど昔ではないのだなと改めて思いました。
ストーリー自体は、漁師仲間、捕鯨仲間、学校の友達との関係、アメリカの家族との心の通う交流、日本の家族との再会など、人間関係を中心に展開するので小説としても十分に楽しむ事ができます。
さて娘はどう感じるかな。いつかジョン万次郎が住んでいたNew Bedfordにも行ってみたいと思いました。