Growth Mindset
アメリカの親は褒め上手です。子供が得意げに何かをして親を振り返り、親は大袈裟に驚いてみせて褒める・・よく見る微笑ましい光景です。
ですが、学校の先生は必ずしもそうではありません。褒めすぎることに対してむしろ警鐘を鳴らす場合もあります。それを知って眼から鱗でした。アメリカの先生は褒めて褒めて褒めちぎるのかと思っていましたから・・。とはいえ、厳しく躾ける昔のやり方に逆行しているわけではありません。教育現場の方針として先生方がよく口にするキーワードは”Growth Mindset”(自分はまだまだ成長できるという考え方)をじっくりと育むということです。
”Growth Mindset” に関してスタンフォード大学心理学教授のDweck博士の有名な実験があります。10-11歳の128人の子供達を二つのグループに分け、同じ数学の問題を解かせた後、片方のグループの子供達には「あなたは賢いのね。」と褒め、もう片方のグループの子供達には「よく頑張ったのね。」と声をかけました。そして、双方のグループにさらに難しい問題を次々に提示していきました。すると、賢さを褒められた群の子供達はかつて褒められたやり方に固執しがちだったのに対して、頑張りを認められた子供達はたとえ間違っていようと新たなアプローチを様々に試すことが多かったという結果が得られました。また、子供達に自分が学校でどのような経験をしてきたかを作文して他の学校の生徒に見せるようにという課題を与えたところ、賢さを褒められた子供たちは「賢さ」を維持すべく大袈裟に偉業を並べたり嘘をつくことさえあったということです。
「自分は他の人に比べて賢いはず」と信じるFixed Mindsetの人は「賢い」呪縛にしがみつくあまり、失敗を恐れたり批判を受け止めることができなかったり障壁を回避しようとしたり努力を惜しんだり人の成功を妬む傾向がるそうです。「自分はまだまだ成長過程だ」と思っているGrowth Mindsetの人は、未知の世界に飛び込んだり、どうにか道を探そうとしたり、努力を惜しまなかったり批判に耳を傾けたり人の成功から学ぶことができると言われています。そして、大きな困難にぶつかった時にGrowth Mindsetの人はそれを乗り越えることができると言われています。
ではGrowth Mindsetを育むために先生方はどのように生徒たちと向き合っているのか。先生方は、生徒に対して、そばであなたの頑張りをよく見ていますよというアピールをします。具体的には、あなたの絵のこの表現が好き、この考え方は面白いね、これはどうしてこう表現したの?などと関心を示す質問をしたりします。
結果を褒めることは、子供を一定の方向に誘導したいときにはとても効果的だと思います。簡単な例で言うとトイレトレーニングとかお手伝いとか。その反面、褒められたい欲求を利用しすぎると子供の自由度を狭める危険性があることは私も認識していたので、絵を描いたり遊びに没頭する子供たちに対して褒めすぎることは控えていました。ですが、殊に学業に関して試行錯誤を繰り返し回り道をする子供達を辛抱強く見守るということはなかなか難しい・・。きっちりとした学習指導要領があり定期テストや受験など結果で評価されることが多い日本の教育現場で、子供が取り残されないようにサポートしたいと思うのも親心。子供を勉強するよう誘導したいと親が焦るあまり、過程を認めることはおろか、結果を褒めることすらできず叱責してしまうなんてこともあるのではないでしょうか。恥ずかしながら私もそうです。
アメリカの教育現場の先生方がGrowth Mindsetを育むために忍耐強く子供たちに向き合う様子はとても勉強になります。双方向的なProjectを中心としたワクワクする授業を組み立て、1つではない答えや考え方を共有しまとめるスキルにも脱帽です。社会で生きていく強さを育むにはこの教育法が理にかなっていることも納得できます。そして、実際に我が子供達も現地の学校が大好きです。
現在、日本の教育課程に沿った通信教育を使ってホームスクーリングをしている私が日本の教育という土俵でどこまで忍耐強く子供を信じて向き合えるか。そもそも問題集にワクワクしない子供たちを強制的に机に向かわせるスタイルは正しいのか。アメリカの学校は好きだけど日本の勉強は嫌いだと言い出す我が子。こんなやり方好きではないと思いつつとりあえず早く終わらせなさいと子供に強いる私。課題山積です。私も成長過程だし・・と言い訳するのもGrowth Mindsetということで良いでしょうか・・いや、違うよなぁ。